予算でできる3つのこと
なんのための予算か
ベンチャーで初めて予算を作るといったら、それはやっぱりファイナンスのタイミングなんでしょう。そのせいか、「予算=ファイナンスのための道具」というように認識されてることがあるようにおもいます。
ファイナンスのための道具であることは間違いないのですが、それだけのものとして捉えてしまうのはやはりもったいないです。
そこで予算でできることを自分なりに考えてみました。
予算でできる3つのこと
■経営方針を具体化する
例えば、飲食業で考えてみます。
大枠の事業方針として、店舗数の拡大を掲げているとします。この情報だけで予算が組めるかというともちろん無理です。店舗数の拡大だけでは漠然とし過ぎていて、予算を組むためには+5店舗なのか+10店舗なのか倍なのか、具体的に数字まで落としこむことが必要です。そうすると予算を組むにあたって、+5店舗が最適なのか、+10店舗が最適なのかを真剣に考えて現時点での結論を出すことになります。あくまでも現時点の。
その結果、漠然としていた事業方針が一気に具体化してきます。+5店舗にするためには、いつまでにどの物件借りて、設備も買って、人もあてがわないといけない、そしてそれを実行するためにはいくら必要で…こんな感じで、大枠の事業方針が予算というフィルターを透ることにより具体的になるのです。
また、副産物としてシード・スタートアップ期にはとても大切な資金繰表ができて、あと自ずとKPIもみえてきますね。
■経営方針の変更をする
ただ、経営環境がかわることは往々にしてありますし、立てた計画通りいくことなんて万に一つもありません。つまり予算というものは早々にして絵にかいた餅にかわってしまいます。じゃあ予算なんて立ててもやっぱり無駄じゃん。いやいやそんなことはありません。経営方針を変更するときにもすごくに役に立つんです。
引き続き飲食業の例ですが、予算上は年内+10店舗を目標にしました。ただ足もと業績好調だったので、目標を+15店舗に引き上げたほうがいいのではないかという議論がでました。ここで+5店舗にするにはヒト・モノ・カネといった経営リソースが足りないので、調達する必要がでてきます。
しかしながらいったいどの程度リソースが不足しているのか、確保しなければいけないのか、また、ヒト・モノを増やすことでどの程度リスクも増えるのか(つまり費用負担が増えるのか)がわからないと、なかなか経営判断しづらいです。
このとき一から数字を積むのと、今ある予算を修正するのではスピードがまったく違ってきます。つまり一度しっかりと予算を作ってしまえばそれをベースにできるので、もとの経営判断をかえたときにどういう影響があるかを適時に予測することができるようになります。
その意味で、予算というのは経営方針の変更時にも多いに力を発揮するのです。
■経営方針の結果を知る
結果を知るというのは大げさですが、現状の仮定のうえでの結果がわかるという意味です。ビジネスは最終的にいくら儲るが大事なので、やはりとった経営判断の結果利益がいくらになるかは常に意識しておく必要があるとおもいます。
壮大な事業展開を掲げてみたものの、実際に数字を積んでみると意外とスケールしないね。リスクの割にリターン少ないね。みたいなことはまぁあります。そういった場合には抜本的に経営方針を見直す必要があるのですが、日々の業務に追われていると意外とそういった根本的なとこを見直すことを忘れていて、立ちいかなくなることがあるので気をつけないといけません。
予算策定は必須か
以上3つ、予算でできることを考えてみました。しかし、すべてのステージ・業種で予算が威力を発揮するわけではないのもまた事実です。
感覚的にはアーリーからミドルにうつるぐらいのタイミング、複数セグメントある会社ではかなりの威力を発揮しますが、シード期、単一セグだとその効果はおちるようにおもいます。
もちろんあったほうがいいのは間違いないですが、どれだけのリソースをかけて作って日々メンテして(作って終わりじゃなくメンテが大事なので、その管理コストはそこそこかかります。)をやるかという、コスト・ベネフィットの問題なんですけどね。